監督ナカジマのふくおか移住日記

映画監督の中島良の福岡移住を日記にします

ハッピーでミラクルな出来事とゴーマニズム宣言

こんにちは、監督のナカジマです。

「なつやすみの巨匠」の試写会が福岡で催されました。来られなかった人はぜひ次回!!

その時、すごくハッピーでミラクルな出来事があったので、今日はそのことを書いた後・・・ゴーマニズム宣言を行おうと思います。

 

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さて、試写の当日、私はすごく緊張して不安な気持ちを抱えていました。

緊張しすぎて、試写室近くの中洲であい橋のベンチで筋トレしてたくらいです。

その前に催された東京の試写では、とても好意的な評価があった反面、冷静なご意見もいただいていました。

それは一言で言うと「作品自体は良いが、マーケティング的には難しい」ということでした。

その理由は

・子供が主役の邦画は近年ヒットしていない

・地域色が強すぎる

・一直線に進むストーリーではない

  上記の3つです。

マーケティング的には売りづらいことはわかって取り組んだ企画です。しかし改めて指摘されると「ふぅ〜」と胃が重たくなりました。

試写は中洲大洋劇場さんで行われました。すごく風格ある劇場ですね。

 

ロビーで久しぶりに再会する人たちとも緊張しちゃって何かギクシャクした感じ。

あわわわ。。。

さっそく上映開始!劇場に緊張が張りつめます。

子供たちのやりとりの中で どっと笑いが起こって、場内が暖まりました。

ぐんぐん 引き込まれて、一体感が生まれ、ラストシーンではすすり泣く声や、涙をぬぐっている方が大勢おられました。

 映画が終わって、明るくなってしばしの静寂が。。。そして満場の拍手。

私は感動で震えながら皆さんの前で挨拶をしましたが、隣の人はそんなレベルではなかったのでしょう。企画・脚本の入江さんは感動でむせび泣いて、挨拶ができないほどでした。

みなさん、ニコニコしていて暖かい気持ちが場内に満ちていました。

とても高く評価していただき、たくさんの感想をいただきました。

そこでお話してわかったことがありました。

3つのネガティブな要素は福岡のお客さんにとっては、むしろポジティブに作用していたのです。

つまり

・子供が主役の邦画は近年ヒットしていない

→これは子供はアニメを見たがるし、大人は大人向けの作品を見るから「児童映画というジャンルには観客がいない」という理由ですが、むしろ試写では「大人も子供も一緒に見られる内容だから家族で見たい」と言ってもらえました。そして高齢者の方も「孫とまた来ます」とおしゃっていました。

・地域色が強すぎる

「今までこんなに福岡に対して愛をもって描いた作品はない」

・一直線に進むストーリーではない

「人生はそういうもの、物語は主人公ただ一人のためだけにあるのではない、登場人物全員のためにある」

多くの人たちが作品を自分たちの宝物にように感じてもらえたようでした、私はすごくすごく幸せでした。

 

そして、中洲大洋劇場さんも作品を気に入ってくれて、

なんと“夏休みいっぱいロングラン上映”をしてくれることになりました。

 これはミラクルなことです、夏休みは大手のアニメやメジャー作品が目白押しなので普通、かけてもらえないのです。

この福岡で「できる限りたくさんの人たちに見てもらいたい」という気持ちからだそうです。

実際、この作品は福岡のたくさんの方々が支援してくれた手作りの映画です、そしてこの魅力はその場所とそこに住む人たちが活き活きと生きている、ということに尽きるのではないでしょうか。

本当にありがとうございました!!とにかく宣伝がんばりたいと思います! 

 

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「作品自体は良いが、マーケティング的には難しい」ということについてです。

昔からそれについては疑問を感じており、毎回作品を作るときはささやかに抵抗していました。そうした姿勢が一部の方々から評価していただき、たくさん作品を作る機会を与えてもらいましたが、ヒットにはめぐまれず、じくじたる思いを抱えてました。

そもそも営利活動ですし、映画に限らずモノを作って流通させるには莫大なお金がかかります。だから商業作品は売れるためにマーケティングに沿って作られています。

これは売れない映画監督の被害妄想だと思ってもらっていいのですが、 私の目には作品が「ベルトコンベアーにのって廻される寿司ネタ」のように扱われていると感じています。

 ・客入りの悪いネタ(映画)は一週間で打ち切り、別のネタにとりかえ。

・似たようなネタばかり流れてくる。

・ネタが悪くても良くみせるテクニックで食べさせる。

・誰がネタを作っているのかわからない、というか興味をもたせない。

・とにかく次から次へとネタが流れてくる、大量廃棄。

・ネタを作った人に利益が還元されない、分厚い既得権の存在。

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という認識をもってまして、この仕組みはバブリーな感じがします。

この中では確かにマーケティングが大事だと思いますが

もっと大切に扱ってほしいし、消費という観点ではなく、自分や誰かにとって末長く愛される作品になってほしいのです。

 (※回転寿司を貶めているわけではありません、喩えが不快に感じた方には謝ります)

 プロなんだから、甘ったれたこと言うな!と思われる方もいらっしゃるはずですが、こういう業界構造では作り手は疲弊し、受け手はいなくなるのではないでしょうか。

というわけで

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長文ありがとうございました。また読んでくださいねー。